2021年2月4日
横浜副流煙裁判について人に話すとき、僕は「団地の斜め下の部屋からのタバコ煙で受動喫煙症になったという理由で、4500万円の損害賠償と、自宅での完全禁煙を訴えた裁判」と言います。
「ただし被告は、実際には防音処理をして閉め切った部屋で、日に2、3本を吸うだけ」そして「実は原告家族の一人は、被害を受けたと言う時期のおよそ1年前まで、喫煙者だった」そう話すとたいてい「それは酷い冤罪だ」と言われる。「信じられない」と。
けれどこの裁判は、現実に起こったことです。黒薮哲哉氏は「訴権の濫用」と呼びました。また端的に「スラップ訴訟」とも。
そもそも提訴の前に、原告と被告の間には話し合いがもたれていました。
そこで被告・藤井氏は自分の喫煙状況を話したうえで、なお自分の吸うタバコ煙が原告宅に被害を及ぼしているのか、実験しています。
一つは、換気扇の前で喫煙し、原告宅でタバコ煙を感じられるかどうか。
原告は実験の結果、タバコ臭さは確認できない、と答えた。
もう一つ、藤井氏はこの日から二週間ほど、自宅での禁煙を試します。
その後再度の話し合いで、タバコ煙がまだ原告宅に流入しているかを尋ねてみます。
原告の答えは、変わらずタバコ煙が入ってくる、でした。
そこで藤井氏はこれまでの禁煙を打ち明け、自分の喫煙が原告宅に流入したのではないことを証明してみせました。
にもかかわらず、藤井氏は民事裁判に訴えられたのです。
これを受けた弁護士が存在することがすでに問題ではないでしょうか。
甲1〜3号証、つまりこの訴えのもっとも重要な証拠は、作田学医師(日本禁煙学会理事長)による受動喫煙症診断書です。しかしこの内の甲3号証=A娘の診断書は、実際には診察をせずに書かれたものでした(医師法20条違反)。これが判明したのは原告側の記述からであり、すなわち原告側弁護士がすでに知っていたことです。
原告A夫の25年に及ぶ喫煙歴、これを提訴前に弁護士が知っていたかは分かりません。しかし一審途中、これが事実として明らかになっても彼らは引かない。作田医師はA夫の喫煙について「2割程度の寄与割合」と謎の理論を語り(甲43号証)、A夫の受動喫煙症診断(甲1号証)を撤回すらしませんでした。そして一審が棄却とされてなお、原告側は控訴に踏み切るのです。
藤井氏宅への2度の取り調べ。これが不自然にも斎藤実・神奈川県警本部長(つまり県警トップ、現在は警視総監)の指示によるものだと示したのも、原告側です(甲16、17号証)。これの意味するところは何か。原告側が自分たちの後ろにある権威を誇示し、裁判を優位に進めるためとしか、僕には考えられません。
受動喫煙症・化学物質過敏症の権威による診断書と意見書、そして神奈川県警本部長、こうした権威の力で一般市民を陥れるための裁判を起こした。それ故この横浜副流煙裁判は、「スラップ訴訟」と呼ばれ得る。僕はそう考えます。
4500万円超、という巨額の一審請求、これは原告の損害が「中枢神経系障害の後遺障害等級第2級1号(2590万円・A娘)」などに当たるという主張に基づいています。
自室での日に数本のタバコ煙が団地の別室に、もし仮に流入していたとしても、後遺障害等級第2級1号とは、あまりに過大ではないか? と、僕などは考えます。しかし民事裁判においては、請求額を高くするために「なんでも言ってみる」のは普通のことだも聞きます。
ならばそれ自体は本裁判・山田弁護士の責でない、とも言えるのかも知れません。しかしこれが民事裁判では普通のことならば、そのこと自体がすでにおかしい。僕にはこのような弁護士の主張が、或いは現在の裁判が、正常なものだとはとても考えられません。
本裁判は一審・控訴審ともに「棄却」とされたので、損害賠償額については判断が示されませんでした。しかし仮にそこに争点が及んだ場合、もし仮にこの主張が通っていた場合を考えると、僕は身震いする思いです。
※化学物質過敏症で、労災の後遺障害認定(11級)が出された事例はあります。ただしこの場合は原因となった化学物質を特定し、負荷試験を行って患者の状態異常を確認しています。
また別の裁判では化学物質過敏症について、このような裁判所の認識が示されています。
「化学物質過敏症の責めをある特定の化学物質を放出した者に帰せたいのであれば、その者が当該化学物質を放出したことを立証するのみならず、当該化学物質が化学物質過敏症の原因物質であることを高度の蓋然性をもって立証する必要がある」
「高度の蓋然性」それが横浜副流煙裁判で主張されたように、「患者の自己申告のみから得られる」とは、僕は到底思えません。